【仮想通貨】仮想通貨は通貨なのか?(1)そもそも「通貨とはなにか?」

仮想通貨とは通貨なのか?簡単な問題ではないので、数回に渡って検討していきたいと思います。
今回は「そもそも通貨ってなあに?」っていうところから

G20 やダボス会議において、現在の仮想通貨は通貨の要件を満たさず、仮想資産と呼ぶべきであるとされました。実際のところは「CryptoAsset」と言われていて直訳すると暗号資産ですが、元々CryptoCurrency(暗号通貨)を仮想通貨って訳すのが通例なので、この場合仮想資産が妥当な訳かと。

いわく、価値が乱高下する状況下では価値の受取手段としては使えない、流動性に乏しいっていうことのようです。
確かにいくら儲かるからと言って、「明日から給与の支払いはビットコインで行います」と言われたら戸惑ってしまいます。

そもそも通貨とは

では、そもそも「通貨」ってなんでしょうか?

通貨は昔は物々交換経済だったところから、穀物や家畜など「みんなが価値があると認める」ものに一旦変えて別のものに変えるということから始まりました。そういう意味では石貨でも貝殻でも、「みんなが貴重だと思うもの」であればなんでも良いわけです。

結局、わかりやすいところで金属に行き着きました。古くは金銀銅を重さで測っていたようです。そのうち、政権が貨幣の形で鋳造・発行をはじめます。

現存する最古の硬貨はギリシアの金銀貨だそうです。一方、中国では青銅銭や鉄銭なんてのもあって、貴金属だけでは経済を支えるための鋳造量が確保できないのが実態でした。布や穀物など「価値ある物品」が交換の中間媒体として使われる状態は並行して長く続きました。

やがて、地域間で通用する貨幣が異なると両替を行う両替商が生まれます。両替商は遠隔地との取引の決済のために預り証を発行し、それを相手方に送付する事によって決済を行うようになります。

手順としては以下のようになります。

両替商は貴金属(金・銀・宝飾品など)を預かり、預かり証を発行する。
預金者は発行された預かり証を、支払いに充てることができる。
支払を預かり証で受けた商人は、両替商に持ち込むことで貴金属に代えることができる。

ところが、貴金属に代えずに、他の支払いに充てることもできました。
そうするとこの預かり証は実質、通貨同等物とみなすことができます。

世界で初めての紙幣は銅不足のために鉄銭が使われていた中国の四川で1023年の宋代に発行された交子と言われています。

ヨーロッパでは十字軍で生まれたテンプル騎士団が聖地に向かう巡礼者の便宜のために預かり証を発行し、貴重品を持ち歩かなくても良いようにしていました。

商業手形

これが資産ではなく、商業取引で行われると手形となります。


この場合の手順は以下のようになります。

手形で支払いを行おうとする人は銀行に口座を開き、一定の金額を証拠金として預けて手形台紙を銀行から受け取る。
支払者が将来の支払いを約束した証書を手形として振り出す。
受け取った販売者は手形を持参して、期日までの金利を差し引いた現金を受け取ることもできる(割引という)。
この手形を銀行に持ち込まずに、手形の裏に署名をして他社への支払いに充てることもできる(裏書という)。
これを繰り返せば、手形も通貨同等物になる。

手形は当初は1つの売買に見合った額で振り出されましたが、次第に取引と分離されていきます。1763年にはロンドン宛の手形が個々の取引と分離した形で次々と裏書きされていることが記録に残っています。(※1)

この手形は英語ではnoteとかbillとかですが、billは英語で「紙幣」の意味もあります。

江戸時代には、大阪と江戸との取引の決済や各藩が大阪の倉に送ったコメの代金の受け取りなどは両替商を通じて手形で行われていました。

現在の手形は開国後に西洋の制度を取り入れたものですが、手形という名前になったのは証文には手形を押しており証文一般を手形と呼んでいたからのようです。

この様に手形の割引を通じて信用を供与することを銀行の「信用創造」といいます。
英語ではもうちょっと直接的で「Money Creation」と呼びます。

つまり紙幣(銀行券)を発行していなくても、銀行は取引を通じて「通貨を発行している」のです

現在の通貨創造

「でも手形なんて企業の話でしょ?」って思うかもしれません。

欧米ではまだ個人でも支払いに小切手がつかわれます。

この小切手の動きは手形とほぼ同じです。支払期日を給料日以降にした先日付小切手を発行したとしたら動きは手形とほぼ同様です。

日本での通貨創造

「でもそれは欧米の話でしょ」って思う方。日本での通貨創造がどのような形で行われるか見てみましょう。

例えば、ガスや電気といった公共料金は、支払いをする前にサービスを受けることができます。

このとき、利用者は業者に引落依頼書を送付して銀行で照会をするだけです。業者は口座に残高があることを「信用して」サービスを提供するわけです。

公共料金でない場合は、振込であったりクレジットカードの信用枠であったりします。

こういう口座残高の増減として発行される通貨を「預金通貨」と呼んでいます。

改めて通貨とはなにか?

こうしてみると通貨を発行しているのは、日本銀行のような中央銀行だけではなく市中の銀行も通貨を発行していることがわかってきます。

「新規通貨発行(ICO)なんてあやしい!」と思っていたあなた。そうです、あやしいんです。

そもそも「みんなが価値のあると思っているもの」を受け入れて、証文(紙切れ)を発行する行為自体があやしいんです。

次回はこの辺りの話をもう少し詳しく考えたいと思います。

 

(※1)C.P.キンドルバーガー、R.Z.アリバー 熱狂、恐慌、崩壊 金融危機の歴史p.115

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