FIREとはなにか?どうやったら実現できるのか?
目次
FIREとは
Financial Independence, Retire Earlyの略で「経済的に自立して早期退職して自由に生きよう」という生き方の選択のことです。どうやったら可能にできるか解説していきます。
Financial Independence
Financial Independenceは経済的自立もしくは独立という意味です。言葉自体は、日本ではベストセラーになった「金持ち父さん 貧乏父さん」(ロバート・キヨサキ著)で有名になりました。
ネットで情報が手に入るようになった今でも一読の価値はあるので未読の方はぜひ。
経済的に自立、というのは資産からの収入が生活費を上回っている状態のことです。ロバート・キヨサキは著書の中で不動産投資を薦めています。理由は以下の通りです。
- 不動産を担保に借金ができるので、早期に資産を形成できる。(つまり、レバレッジ=梃子の原理が効く)
- 経費が計上できる。減価償却などで現金が出ていかない経費計上ができるので税金を抑えることができる。
- なにより土地という実物資産を保有するので株や債券とちがって「紙=価値ゼロ」になることがない。
不動産投資は確かに有力な資産形成手段です。ですが、「大家業」という事業主になるということでもあり商才が必要ですし経営的判断も求められます。またロバートキヨサキの著書が有名になったことで競合も多く優良な不動産を探して取得することは簡単ではありません。また、日本の不動産業界はグレーゾーンが多く売り手と買い手の両方から高額な仲介手数料を貰おうとする(両手取引と言います)仲介業者が居たり不動産を持ってると知ったら「売りませんか!?」とガンガン携帯電話に掛けてくる「個人情報保護法って、知ってる?」言いたくなる遵法意識のない業者が跋扈してる世界です。正直疲れます。そこそこ資産ができてから資産形成の方法の1つとして取り組むなら良いのですが最初からここに行くのは疲れますしおすすめできません。
まずは誰でも手軽に始めることができて再現性の高い(≒真似しやすい)、積立投資から始めることをお勧めします。
4%ルール≒25倍の法則
中国系カナダ人のクリスティー・シェンはFIRE実践者です。自分の実践した内容の本も書いています。
彼女は著書の中で金融資産でも年利回り4%は実現できるので年生活費÷4%=年生活費の25倍の金融資産があれば早期リタイヤが可能だと説きます。彼女はこれを4%ルールと名付けました。これは彼女が北米市場つまりはアメリカ株へのアクセスが容易だから出来ることで、日本株式にだけ投資してると2-3%が良いところ、というのが実感です。つまり25倍どころか50倍必要になるかもしれないのです。なるべく利回りの良い資産にする、というのはかなりのポイントです。
上記は1985年1月を100として日経225とS&P500を比較したグラフです。「はっきりわかんだね」って感じですよね。下落局面はありますがトラックレコードだけみると日本株だけに投資してるとどうなるかっていうのは予想が付きそうな感じです。(過去のレコードであり推奨ではありません。投資の判断は自己責任でお願いします。)
また、日本の場合は株の売却益や配当に関して約20%の税金がかかります。つまり資産の4%を手取りにするには毎年5%投資成績を上げ続けなければいけません。これは容易なことでは無いことは肝に命じておきましょう。
72の法則
72の法則というものがあります。これは年利R(%)で運用した時に元金が何年で倍になるかを経験則として示したものです。1〜15%の範囲だとこんな感じです。
年利R(%) | 年数Y | R×Y |
1 | 69.7 | 69.7 |
2 | 35.0 | 70.0 |
3 | 23.4 | 70.3 |
4 | 17.7 | 70.7 |
5 | 14.2 | 71.0 |
6 | 11.9 | 71.4 |
7 | 10.2 | 71.7 |
8 | 9.0 | 72.1 |
9 | 8.0 | 72.4 |
10 | 7.3 | 72.7 |
11 | 6.6 | 73.1 |
12 | 6.1 | 73.4 |
13 | 5.7 | 73.7 |
14 | 5.3 | 74.1 |
15 | 5.0 | 74.4 |
年利8%の時が近似として最も有っているのですが、1−15%の範囲の平均でだいたい72になります。日本のような利子が低い国では「70の法則」とした方が近似が良いようです(汗)。でもまぁ大体あっている、っていう数字です。
2008年のリーマン・ショック後に13%の投資利回りがあったというS&P500インデックスをHoldしていた方たちはほんの5−8年で半減した資産を回復し更に数倍に資産を増やしていた、ということになります。
事程左様に「1%の違いは大きい」のです。
生活費を下げて投資資金を貯める
不動産投資にしろ金融投資にしろまずは元手を貯めないといけません。資産を相続した資産家でも無い限り普通は裸一貫、もしくは奨学金(つまりは借金)を背負って社会に出る方がほとんどだと思います。たとえあなたが1000万2000万を稼ぐ方だとしてもそれをそのまま使ってしまっては後に何も残りません。「たくさん稼いでたくさん使うんだ!それが漢の生き甲斐だ!」みたいな知人も居ます。そういう生き方もあるとは思いますがFIREは違うのです。「若い時に頑張って稼いで、後は好きな事をして暮らす」という生き方の選択なのです。なのでまずは収入に見合った生活をして手取りの何割かを貯めて積立に回す、ということが必要です。
どうすれば貯められるかってとても簡単です。
(貯蓄)=手取りー生活費
です。手取りをあげる努力をして、生活費を下げればいいのです。手取りに見合った生活をしていれば貯蓄は必ずできます。
生活費を把握する
節約する、と言ってもまずは現状を知る必要があります。「ほっといても無駄遣いはしないから貯まる」っていう方ならいいのですがそういう方は多くはありません。多くの方は「どこにお金消えていくんだろう…」って感じになると思います。わかります、生きていくってお金かかりますよね(汗
なのでまずは現状を把握しましょう。生活費を把握する方法は主に以下のものがあります。
- 自分で家計簿をつける
- レシートを撮影して記録できるアプリを使う
- 銀行口座やクレジットカードの利用履歴を取り込むアプリを使う
圧倒的に楽なのは一番最後です。昔は節約したいならクレジットカードは使うな、というのが一般的な教えでした。今は違うのです。クレジットカードを使った上で利用履歴から家計簿を自動的につけるのです。ポイントも貯まりますし一石二鳥です。
「クレジットは苦手なんだよなぁ」と言う向きはチャージ型の電子マネーやQRコード払い、銀行口座の残高から払えるデビットカード払いを登録する手もあります。主なところではnanaco,WAON,楽天edy,モバイルSuica,モバイルPASMOなどネットで利用履歴確認ができる交通系電子マネー、LINEpay,d払い,au Payなんかが登録可能です。
利用履歴取り込み型のオススメはマネーフォワード MEです。元々は確定申告を助けるためのサービスを個人向けにしたもので、取り込める口座の種類が非常に豊富で技術力も高く、利用価値が高いです。無料で使える範囲も10口座までと充分で、将来的に投資口座が複数になった時の管理にも使える優れものです。
管理人、イチオシです。
生活費を下げて貯蓄資金を作る
前述のシェンは生活費を下記の様に分けて節約を提唱しています。
- 自分を幸せにしない基礎的な支出。まずこれを削る。
- 削ると痛みを伴うが次第に慣れていく支出を削る。
- 維持費がかかる所有物を減らし想定外の費用を可能な限り削る。
- 自分へのご褒美を加える。
彼女は「お金を使うことには中毒性があるのでどんどん慣れていってしまう」と言います。その通りだと思います。高価なバックや財布を何個も買っても幸せの量は比例して増えないのです。
固定費を削る
まずは、毎月固定的に出て行く支出を見直しましょう。保険代、スマホ代、水道光熱費、住居費、などなどです。
これらは一度見直しをすると毎月・毎年継続的に勝手に支出が減ってくれます。つまり対費用効果が高いのです。
中でも保険の見直しはかなり効きます。日本の保険の中で「入っても良い」と言える保険は本当に少ないのです。あえて言うなら自動車保険と戸建ての方の火災保険以外ほぼ不要です。養っている人が居て自分が倒れたらこの人たちの生活はどうなるんだろう、という場合は生命保険を検討しても良いかもしれません。それも掛け捨てにしましょう。他は公的福祉と貯蓄で殆どがカバーできます。日本の福祉が優れているからでもあるのですが。生保レディが持ってくる定期付き終身保険は無駄の極致です。掛け捨て保険+積立NISAの方が保険会社に払う費用がかからない分、有利です。絶対入らないことをお勧めします。
もし、見直す余地がなかったとしても保険の支払いを月払いから年払いにするだけでも充分節約になります
スマホ代
次にスマホ代に代表される通信費です。正直、各社サービスに違いがほとんどありません。高額なキャリアのまま契約を続ける理由はないと言えます。私の場合は「ばーちゃん家がドコモしか入らないから…」とか「大好きな沖縄行くとドコモとauしかはいらない!」てことに陥ります。それであればドコモ系のMVNOに変えれば良いのです。私の場合はビックカメラで売っていたBIC SIMに変えています。1回線月2千円以下でなんの不具合もありません。
新しいiPhoneが欲しいからなのか大手キャリアのままで居るメリットが僕には全く理解できません。
また、自宅にブロードバンド回線があればそんなに大容量のモバイル通信もしないと思います。セット割引も有りますし合わせて見直していきましょう。
水道光熱費
ちまちま削る、というイメージがあるかもしれませんが今や電力もガスも自由化されています。地域によって競争環境はかなり違うのですが契約先を変え変えるだけで年間数万円の節約になることがあります。
住居費
減らすのが難しいのですが、生活費の中で住居費は大きな割合を占めます。生きて行くに従ってものはどうしても増えます。それをそのままにして広い部屋に引っ越していっては住居費が増えていってしまいます。特に東京など都市部では住居費が上がりがちです。逆に一度下げればしばらくずっと効果が続くので一考の価値ありです。
コストの低い投資をする
生活費とともに投資のコストも下げる必要があります。最もコストの安い投資の代表格はインデックス投資です。S&P500などインデックスに連動する投資信託に毎月同額を積立投資するのです。先述の通り、米国株の方が日本株より過去の投資成績が良いので米国株インデックスの中から選べば良いと思います。ニューヨークダウは有名ですが銘柄が30種しか無いので特定の銘柄に引っ張られたりします。もう少し幅が広くコストの安いものの中から選べば良いでしょう。
販売手数料はもちろんゼロのノーロード、管理手数料は0.数パーセント代のものがオススメです。0.1%切っているものだってあります。投信で年間手数料1%超えてる商品なんてゴミクズです。それだけ利益が持っていかれるのですから。
ETF(上場信託投信)という手もあるのですが、これの弱点は定額買い付けができない点です。リスクの分散という意味では単位買い付けより定額買い付けの方が有利なのです。なぜなら「安い時に多く買い、高い時には少しだけ買う」を自動実行してくれるからです。商売にしろ投資にしろ基本は「安く買って高く売る」です。それを自動でやってくれるのだから活用しない手はありません。
詳しくは老後2千万円問題への備え、っていう記事に書いてますのでご参照ください
ETFの優位性は管理手数料の安さにあります。同様のインデックス投信で定額積立をして定期的に乗り換えるとか、ETFを定額買い付け出来る証券口座を選ぶ、といった方法があります。
引退後の生活を計画する
仕事を引退するということは生活がガラッと変わることでもあります。予め10年計画ぐらいで設計をしないといけません。そうでないとせっかく引退しても「元のほうが良かった」と戻ってしまうことにもなりかねません。
生活設計をする
仕事をしない、もしくはリモートでできるような副業のみにするといったセミリタイアの場合「仕事がある都会」に住む必要がなくなります。そうすると生活費を大幅に下げることができるのです。例えば、東南アジアで過ごして費用を浮かせるといったことが可能です。特にマレーシアはMM2H(Malaysia My 2nd Home)という移住ビザがあることで有名です。ある程度の金融資産と収入証明・資産を移すことが必要ですが観光ではなく移住ビザが取得できることから人気の移住先になっています。
またタイは日本人駐在員が多いことから日本人コミュニティが存在し、タイに住みながらWebデザイナー・プログラマーとしてセミリタイアに近い生活を実践している人たちも居ます。
海外投資を楽しむ会(AIC)を主催者する橘玲氏は永遠の旅行者(Perpetual Traveler)という生き方を提唱しています。これは全世界を旅行し続けることでどこの国の居住者にもならないことで納税の義務から解放される、ということを目指すものです。難易度は低くはありませんが税務コストから逃れられることから累進税率を嫌う超富裕層が実際に実践している生き方でもあります。
そこまで極端でなくても日本の田舎に移住して空き家を借りてタダ同然のような居住費で暮らしている方もいます。都会から移住すると自動車が必須になるので費用が上がる部分も有りますが総額としては下がると思います。
設計した生活に耐えられるか検討して備えをする
生活費が劇的に下げられるとしてその生活に耐えられるかどうかを検討する事は非常に重要です。
田舎に移住して何も刺激の無い単調な生活に耐えれるか、田舎の濃密なコミュニティに溶け込めるか、会社中心で生きてきて毎日会って雑談をしていた同僚が突然居なくなって耐えられるか、とかそういうことです。会社人間だった方が突然毎日暇になって耐えられなくなるというのは普通の退職でもよく聞く話です。
- 趣味を見つけて仕事以外のコミュニティを探す
- 副業を始めて組織以外の人脈を作る
- 週末や大型連休を使ってプチ移住を繰り返し、地元の人達との人脈を作っておく
といった事が考えられます。正直、資金繰り計画よりも「生き方を変える」ということの重要性の意味ではこちらのほうが大事ではないかと思っています。私の知り合いでも沖縄に憧れて移住した人が何人も居ますが「こんなはずではなかった」みたいなことをおっしゃる方が複数居ます。
下記の話はFIREではなく早期退職を迫られた管理職が家で居場所がないという記事ですが身につまされる話なので読んでみてください。
早期退職した「大企業の管理職」を襲う「どこにも居場所がない」という大問題 -現代ビジネス2021.7.17
この記事では家に居場所がない元管理職の男性が用もないのにスーツを着て元同僚・仲間のところに挨拶回りに行く姿が描かれる。資産を築こうとがむしゃらに働いていると逆にありえるお話です。
資産の現金収入を計画する
退職後、資産を元手に暮らしていくわけですが金融資産がメインだと手取り収入4%は容易なことではありません。例えば日本株式の配当収入は1〜2%程度がせいぜいです。そうすると必要なだけの現金収入をどうやって得るのかということが問題になります。
一つの方策としては現金配当が高い銘柄に資産を移すことです。
- REIT 不動産投資法人
- 高配当ETF
REITは不動産を保有して家賃収入を得る法人の株(投資口)です。いうならば大家業に出資をして設けの分配を受ける感じです。直接不動産を所有するわけではありませんが不動産投資としての利回りを受けることができます。
高配当ETFは高配当株のインデックスに連動する上場投資信託です。昔高配当株の代表銘柄だった電力株は東日本大震災を経て惨憺たるありさまなので、個別株よりインデックスの方がリスクは少ないよなぁって思います。
日本のREITであるJ-REITや高配当ETFでも3%台です。すべてを高配当銘柄に変えるのも分散としてはあまり良くありません。そうすると持っている金融資産一部を継続的に現金に変えて生活していく必要があります。地合いの悪い時に現金化するのは気持ちのいいものではないので、目安として金融ショックからの回復期間として5年分程度の生活費を現金として保有しておきましょう、と提唱されています。
また、金融資産から徐々に実物不動産投資にシフトしていくのも手です。そうすると不動産収入として現金が入ってきますし確定申告して必要経費を計上することも可能です。数軒の不動産投資を数年確定申告することで、融資が引き出しやすくなりますし資産を更に増やしていくことも望めます。
また、前節でも触れましたが完全にリタイヤせず現役時代から副業を始めておいて、もっとストレスの少ない仕事を続けながら好きな時に好きなことをする、という生活を目指すのも一つの手です。「社会に役に立っている感覚」というのは自己効力感・自尊心というものに効いてきます。単に遊び呆けているだけ、という状態は逆にメンタルにくることもありますよ。
まとめ
- 生活費を下げて生活費の25倍の資産を貯める
- 資産がたまったら生活費をさらに引き下げて資産からの収入で生きていけるようにする
- そうやって会社に拘束されるのではない人生をめざす
…といったものが主な骨子になります。決して簡単ではありませんが実現不可能というほどでもありません。
生き方の選択の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。